ブレグジットがTHEOに与える影響とは?
※本ブログの内容は、2019年3月28日時点の状況に基づき作成しています。
ブレグジット(英国のEU離脱)に関するニュースが世間を賑わせています。
ブレグジットのTHEOのポートフォリオへの影響について、またTHEOがこのようなマクロレベルのイベントリスクをどのように管理しているか、気になっている方もいらっしゃるかと思います。今回のブログでは、考えられるブレグジットの結果と、それが及ぼす金融市場やTHEOのポートフォリオへの影響について見ていきます。
2016年6月、英国の国民投票が「EU離脱派の勝利」という予想外の結果になってから2年半、また英政府がEUを離脱する手続きをスタート(リスボン条約第50条による、欧州理事会への離脱の通告)してから、2年が経ちます。
しかし、英国がどのようにEUを離脱するのか、英国とヨーロッパ諸国の間の、将来の関係についてはその多くが未定となっています。
英国内ではブレグジットへの賛成派と反対派双方の大規模なデモが起きたり、またメイ首相が、現状の離脱条件の英議会による承認を得るため、議会が承認した場合の自らの辞任を提案するというニュースもありました。現在、英国の状況は非常に不安定です。かつ政治においても議会では今後の進め方について全く合意が形成されていません。
今後の流れは以下のようになっています。
- 4/12:仮に英議会で現状のEU離脱の条件の承認に至らなかった場合、英国政府が新たな計画を提案しEUが英国議会での承認期限の延長に同意しない限り、英国は合意が無いまま4/12にEUを離脱する(”ハード・ブレグジット”)。
- 5/22:英議会が現状のEU離脱の条件を4/12までに承認した場合、英国は5/22にEUを離脱する。
想定し得る主な結果と、その場合に予想される金融市場の反応を、下表にまとめました。
ブレグジットの経済的なインパクトは?
OECD(経済協力開発機構)によると(※1)、ブレグジットによる目先の経済的インパクトとして、約3.3%程度、英国のGDPが低下する可能性があります。長期的には約5.1%程度低下するかもしれないとのことです。この影響は、”ハード・ブレグジット(合意なきEU離脱)”の場合はさらに大きくなる可能性があります。
EUへの影響としては、約1%のGDP低下が見込まれています。
英国は世界で5番目に経済規模が大きく、世界の合計GDPのうち約3.5%を占めています。EU(英国除く)は約18%を占めています。そのため、GDPが英国で5.1%低下し、加えてその他の欧州で1%低下すると、数年にわたって世界のGDPは0.36%程度低下することが見込まれます。それに対して、OECDによる今年の世界GDP成長率見通しは3.3%となっています。
この考え方に基づくと、短期的にはブレグジットへの市場の大きなリアクションがあるかもしれませんが、長期的には経済的なファンダメンタルズが市場を牽引し、経済的インパクトは限定的であるように思われます。ブレグジットと比較し、米国での景気後退や、中国での急速な経済減速、あるいは米中の貿易戦争の方が、世界経済により大きな影響があると考えられます。
※1 OECD, April 2016: “The Economic Consequences of Brexit: A Taxing Decision”
政治的な不透明感を念頭にどのように投資を行うか
先に述べたようにブレグジットの結果によって、金融市場は影響を受ける可能性があります。その際、THEOのポートフォリオも全く影響を受けないとは言えないでしょう。
では、このような政治的な不透明感を念頭に、どのような運用をしていくべきなのでしょうか。
対応策の一つは、ポートフォリオのリスクレベルを下げること、つまり、リスクに対して最もエクスポージャー (※2) の大きい市場への配分を下げることです。
これは筋の通ったアプローチですが、いくつかの問題があります。ポートフォリオの変更には取引コストがかかりますし、もしそのリスクが起こらなかった場合に、上昇分を諦めることになります。またもしマーケット間の相関が強まった場合は、そもそもこのアプローチは効果が無いかもしれません。
※2 保有している金融資産のうち、市場の価格変動リスクの影響を直接受ける資産の割合のこと
一般的には、ポートフォリオからリスクをすべて取り除こうとするのは、理にかなったことではありません。長期的には、相応のリスクを取らずにリターンを得ることは困難です。
そのため、投資にあたり全てのリスクを避けることではなく、下記のことがより重要だと考えています。
- リスクを可能な限り分散させる
- そのポートフォリオの目的に焦点を当て、ゴールを達成するためにとるリスクを最小化する
- 仮に、市場全体に影響を与えるような大きなイベントが起こった時にリスクを減少させる準備をしておく
これが、THEOが採用しているアプローチです。
THEOはグロース・ポートフォリオ(株式中心)、インカム・ポートフォリオ(債券中心)、インフレヘッジ(実物資産中心)3つの機能ポートフォリオを組み合わせ、一人ひとりに合わせたポートフォリオを組成しています。
それぞれのポートフォリオが、異なる資産クラス・異なる地域をカバーする数多くのETFからなり、そのETFをなす何千ものエクスポージャーを内包しています。これにより、ひとつの出来事や国から大きな影響を受けるリスクを限定的にすることを目指しています。
加えて、それぞれの機能ポートフォリオは、投資目的を達成するために取るリスクを最小化する目的で構築されています。
例えば、THEOグロース・ポートフォリオはその投資目的上、比較的高い水準のリスク・リターンを持つETFを投資対象としながらも、リスクを最小化するような銘柄の組み合わせ(例えば銘柄同士の相関性が低くなるようにするなど)となるよう構築されています。
最後に、THEOは市場全体に影響を与えるようなリスクへの対応の一助とするために、「AIアシスト」を活用しています。もしAIアシストのアルゴリズムが、特定の市場や資産で市場全体に影響を与えるような大きなイベントが生じつつあると示唆した場合には、THEOはそのリスクが過ぎ去るまで、自動的にそれらのアセットから資金を移動させます。
今回のブレグジットに限らず、世界には様々な政治的・経済的なイベントリスクが存在しています。
THEOの運用は、目的別に機能ポートフォリオを組成し、そのなかでも世界中の多くの地域や資産クラスに分散投資を行い、また目的別にリスクを最小化するように構築することで、マクロレベルのイベントリスクに備えています。
イベントによる相場の動きは、みなさんも気になることと思います。ただ、10年20年の長期で見た場合は、その影響は一時的なものであるとも言えるでしょう。
目先の変動を気にしすぎず、コツコツと長期で運用を続けることが、賢い対応法と言えるのではないでしょうか。
本コメントにおいて引用した市場データは、弊社が信頼できると判断した情報を使用しておりますが、弊社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、本コメントは、作成時点の弊社の見解であり、今後の市況や運用パフォーマンスを示唆、保証するものではありません。
THEOの運用については、こちらの「THEOの運用の考え方」をご覧ください。運用方針、運用モデルについて、詳しくは、THEOホワイトペーパーをご参照ください
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